忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

高杉視点 たまたま、偶然、それは本当に…。

たまたま、偶然、それは本当に…。
 

寒い夜だ、月の明かりがあたりを銀色に照らしている。
なにもかもが青白く、ぺっとりとした黒い影がしんと静寂を保っている。
裸足に草履で、高杉は通りを歩く。
歌舞伎町から少し入ったこのあたりは、店もないため深夜になれば人もいなくなる。
じゃり…じゃり…と、小さな音だけが聞こえていたが、ふと人の気配を感じて足音を消す。
別になにか意図があったわけではない、目的も。
なんとなくその気配に近づいて、そしてそこにいた人間を視界にとらえたとたん、高杉は建物の影に身を潜めた。
銀色の月明かりに、その髪ははまるで絹糸のように光を弾いた。
見覚えのあるくせ毛、渦巻き模様の白い着物。
ぼそぼそと話し声が聞こえる、そして…。
銀時が相手にそっと唇を寄せる。
受け止めているのも、また男のようだ。
銀時と背格好の変わらない、こちらは烏の濡羽のような黒髪に漆黒の着流し。
何度か角度をかえてかわされた口づけは、銀時の膝からふっと力が抜けたことで離れた。
黒い男は慣れた仕草で銀時の腰に腕を回し、からかうようにおでこへと顔を寄せた。
銀時の姿勢が崩れたことにより、男の顔を見ることができた。
切れ長の瞳に端正な鼻筋。
追われる身の高杉には見覚えがあった。
真撰組、鬼の副長土方十四郎。
 

高杉は身を潜めていた建物沿い歩き、銀時たちからは気づかれないよう歩き続けた。
かつての友人は、自分達には向けたことのない瞳であの男を見ていた。
「かんけーねーなぁ。」
小さく呟き、だが、ぽっかりと胸のどこかが軽くなる。
袂から煙管を取り出し火をつける。
吸い込めば、あのころには知る由もなかった匂いが自分を包む。
ふわふわと夜に霧散していく煙は、まるでつかめない白い男を思わせる。
随分と感傷的な自分の思考に、高杉は自嘲気味に唇を歪めた。
「ずいぶん大事にされてるみてぇじゃねぇか、銀時。なぁ?」
ま、幸せなら…それでいい。
自分は自分のやりたいようにやる。
いまさら何に縋るつもりも欲しがる気もない。
空を仰げば、静かに静かに月が眠る。
 


2010年1月21日

PR

Copyright © 銀魂 : All rights reserved

「銀魂」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]