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「あ~、万事屋の旦那じゃねぇですかぃ。」
聞き慣れた声に振り向けば、少年がひらひらと手を振っている。
「おぉ、総一郎くんじゃない?なに、またさぼりですか。」
栗色の髪をくしゃくしゃと撫でてやれば、真選組一番隊隊長はされるがままで大人しい。
「総悟でさぁ、旦那。」
彼のそばにいつもいるはずの男がいない。
すこしだけ泳いだ視線を、少年は見逃さなかったようだ。
「…土方さんなら今日は非番ですぜ。」
見上げてくる視線はいつもと変わらずぼんやりとしていて、感情が読めない。
「そぅ。…沖田くんは鋭いなぁ。」
苦笑するしかない。
もう一度頭を撫でてやれば、今度は少し可笑しそうに口元を綻ばせた。
「今日は非番なんでさぁ。だから、きっといつもの定食屋で、いつもの犬の餌食ってますよ。」
だってさっき財布をもって屯所を出て行くところをみたんでさぁ。
そういって小柄な背中は雑踏の中へと消えていった。
「そぉかい、情報どうも。」
苺牛乳とジャンプを買って、家でごろごろする予定だったのだが。
「ん~、どおすっかなぁ。」
足は自然、方向を変える。
至福の午後を捨ててまで、自分はどうしようというのか?
あの気分の悪くなるようなものの隣で食事をしたいのか?
「あぁ、俺って馬鹿野郎。S星の王子の罠ってわかってて行くの?行っちゃうの?」
定食屋の扉を開けたら、あの男はどんな顔をするだろう。
マヨネーズを溢れるほどのせた白米をかきこみながら、きっとまた眉間に皺を寄せるのだ。
喧嘩ばかり、でも離れられない。
クールぶったあの男の仮面が剥がれるところが見たい。
ぎゅっと睨んでくる瞳が真面目だから。
抜き放たれた剣のように鋭いあの視線が欲しい。
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