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「銀ちゃ~んっ!!」

「銀ちゃ~んっ!!」
すっぱーーんっ!!!
勢いよく襖が開けられ、少女の大音声が響き渡る。
「ん…、なんだよ神楽…、いったい今何時だと…。」
もごもご呟きながら布団にもぐっていく銀時へ、神楽が突進する。
「銀ちゃん銀ちゃんっっ!!」
いくら銀時が布団をひっかぶろうと、神楽の怪力には敵わずむしり取られてしまう。
「っだよ、おい!なんで仕事の無い日まで睡眠妨害されなきゃなんないのよ。」
白髪をかきむしりながらぼやいた言葉も、神楽はまったく意に介さない。
「銀ちゃん、お届けものネ。」
ずいっと目の前に差しだされた包みは一抱えもある。
どうやら宅配便が届いたようで、伝票が張り付いている。
品名には「ケーキ」と記入がある。
「銀ちゃんケーキが届いたヨ。食べていい??」
銀時宛のそれを開梱したいばかりに神楽はこうして叩きおこしにきたようだ。
「…おいっ、ちょっとまて。」
包みを受け取り、もう一度伝票を確認する。
お届け希望日、10月10日、午前中。
品名、ケーキ。
「10月10日、ケーキ、ね。」
神経質そうな尖った文字で、伝票にはそう書かれている。
「差出人は…『多串』ね。」
くすくす笑う銀時をみて、神楽も笑みを浮かべる。
「馬鹿な男アル。銀ちゃん、さっさと開けるヨロシ。ワタシも食べたいネ。」
茶色の包み紙を開けると、中からはまた包装紙が出てきた。
上品な焦茶色のそれをまた破き、真っ白な箱の蓋をあければ、大きなアップルパイ。
プレートもローソクも入っていないかわりに、そのアップルパイの上には小さな葉っぱが乗っている。
星型の縁が黄緑色をしたその葉は、おそらくアイビー。
10月10月の花は、イングリッシュアイビー。
花言葉は永遠の友情。
林檎の花の花言葉は選ばれた恋。
そして実は、「誘惑」。
「たまたま…ってことは…ねぇよなぁ。」
大きな誘惑からは、甘い香りがする。
銀時の許しがでるのをまつ神楽へ切ってこいとアップルパイを手渡すと、銀時は着替えを始めた。
 

朝食代わりにパイを食べたら、送り主に会いに行こう。
クリームの装飾もないシンプルなアップルパイのようなあの男に。

 

×××

2009年10月9日
2009年11月20日再UP

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