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「おーい、そこの酔っぱらい。」

「おーい、そこの酔っぱらい。」
声に振り向けば、黒い車から、黒い男が降りてくるところが目に入る。
銀時はゴミ箱に腰かけたまま、ヘラリと笑った。
「っくぅ~。なぁんだよぉ、多串くんじゃねぇかぁ。」
ひらひら降った自分の指の数が多くて、あれれと目を寄せる。
くわんくわんと頭が回り、ひくっと喉を鳴らしながら可笑しそうに男を見上げる。
「なぁんか、っく、俺の指いっぱいに見えるんですけど~、ははっ。」
「てめぇどんだけ飲んでんだよ、この万年ぱーが。」
ため息をついて、土方は煙草を咥えると、銀時の頬を摘んでやる。
「ひででで…。んにすぅんだようぅ…ひぃっくぅっ。」
にへらにへら笑う紅い目が、土方を見てむぅっと眉を寄せ、またへらへら笑う。
「おらっ、立て。連行だ。」
銀時の脇から腕を通して半ば抱き上げると、パトカーの助手席へ積んでしまう。
「おぉ~、タイホタイホ。」
くすくすと笑いながら土方の頬に小さなキスが降る。
「じっとしてろよ、酔っぱらい。」
シートベルトをしてやり、運転席に回りアクセルを踏み込む。
「ねぇねぇ、土方くぅん。」
「んだよ。」
ぐっと身を乗り出し、身を寄せる銀時を横目で見ながら、土方は咥え煙草をくゆらせる。
「これってドライブ?」
前を見ながら銀時の頭を押さえつける。
「だまってろ酔っぱらい。酒臭ぇんだよ。」
ふわふわの銀髪が指にからまる。
手のひらの下でぶぅぶぅ言う銀時だったが、その煙草の匂いのする指先が撫でる様に動くのに気が付き、また銀時はくふふと笑った。
「ねぇねぇ、土方くん。これってデート?」
「好きにしろ。…どうせ明日にゃ覚えてねぇんだろ。」
煙草の匂い、土方の指先、低い声。
ため息を吐くように、銀時はまた笑う。
「俺が忘れちゃったら…寂しい?」
「…そうだな。」
赤信号。
銀時の火照った頬に、小さなキス。
深夜、後続車両はない。

 

×××

2009年12月24日
2009年12月30日再UP

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