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高杉→銀時・桂・坂本 べべべんっ。

べべべんっ。
三味線の独特の音が壁ににじんわりと溶けていく。
部屋は蝋燭が一本、障子の脇に立っているだけ。
あとは窓から差す月明かりだけが青白く広がるばかり。
男の影が濃く畳みに伸びている。
べべん。
窓枠に腰かけた男がつま弾く三味線は、どこか物悲しく続く。
べべべん、べべべべんっ。
「桂…、お前はまだ理想を追うのか…。」
べん。
男の隻眼は、自分の細い指先を見詰めていた。
呟き、また弦が震える。
「辰馬、お前は空に行ったきり。今頃どこで笑っている…。」
口元が、わずか笑みを浮かべる。
だが、その一つ目は奏でる音のようにひどく切ない。
べんべべん、べんべん…。
「銀時…、お前も昔と変わらないなぁ。」
べーんん…、べべべん。
「先生…、まだみんな元気だ、元気でやってる…。」
べんべんべんべべんっ、べべべべんべんっ。
男の長い前髪が夜風に揺れ、顔の左半分を覆う包帯が月明かりに晒される。
 

白い指が、寂しげに弦を揺らす。
ぽろぽろと零れる言葉を月から隠すように、三味線が鳴く。
着物の裾から伸びた男の足は、指同様細く、白く。
青白い明りに、幻想的なまでに妖しく。
着物に舞う蝶のように、男はそのまま音とともに消えてしまいそうなほどに存在がおぼろげで。
ただただ、いつまでも三味線の音が部屋に響いていた。

 

×××

2009年10月20日
2009年11月20日再UP

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